親子で挑戦!「書く力」がぐんぐん伸びる!羽咋市の小学校発、家庭でできる20のヒント

「うちの子、作文が苦手で、原稿用紙を前にすると固まっちゃうんです…」 「どうしたら自分の気持ちや考えを文章で表現できるようになるのかしら?」

幼児期から小学生のお子さんを持つ保護者の皆さんなら、一度はこんな悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか。デジタル化が急速に進み、短い言葉でのコミュニケーションが増える現代だからこそ、自分の考えを整理し、相手に分かりやすく伝える「書く力」の重要性はますます高まっています。この力は、国語の成績に留まらず、あらゆる学習の基礎となり、将来社会で活躍するための思考力、コミュニケーション能力、そして問題解決能力にも繋がる大切なスキルです。

実は、石川県羽咋市の小学校で、子どもたちの文章力を高めるための素晴らしい取り組みが注目されています。それはなんと、先生たち自身が新聞投稿に挑戦するというもの!この心温まるニュースをヒントに、ご家庭でお子さんの「書く力」を楽しく育むための具体的なアイデアを、たっぷり20個ご紹介します。

先生も「書くって難しい!」を痛感。だからこそ生まれる「共感」の指導

この記事の元になったのは、羽咋市立粟ノ保小学校での実践です。羽咋市では、以前から小中学生が北國新聞の投書欄「地鳴り」へ投稿する活動が盛んで、子どもたちの文章力や表現力を育んできました。特筆すべきは、粟ノ保小学校では、子どもたちだけでなく、先生方もこの「地鳴り」への投稿を始めたという点です。

ある日の校内研修では、田中利弘校長と9人の教諭が、「コメの価格高騰」や「地域見守り隊員の方への感謝」といった、社会的なテーマから身近な感謝の気持ちまで、様々な題材で400字程度の文章作成に実際に取り組みました。

その中で先生方からは、 「いざ書こうとすると、何から書き出せばいいかテーマを設定するのが難しい…」 「頭の中では色々考えているのに、それを言葉にして文章にまとめるのは本当に簡単ではない」 「400字という限られた文字数で、自分の考えを的確に伝えるのは至難の業だ」 「児童が悩む気持ちが、今回本当によく分かった」 といった、率直な感想が次々と聞かれたそうです。普段子どもたちに「書きなさい」と指導する立場の先生方自身が、書くことの難しさを改めて痛感されたのですね。

この「先生も投稿」という取り組みを提案したのは、3年生担任の山岸哲学先生(45歳)です。「大人になると、自分の思いを改めて文章で表現する機会は意外と少ないものです。今回実際に書いてみることで、子どもたちがどれだけ悩み、考えながら文章を書いているのか、そのプロセスを深く理解することができました。この経験を、今後の作文指導に活かしていきたい」と、その意義を語ります。

先生方が経験した「書くことの壁」は、子どもたちが日々感じている壁そのもの。この共感が、子どもたちの気持ちに寄り添った、より温かく、より具体的な指導へと繋がっていくことでしょう。例えば、「うんうん、そこから言葉にするのって難しいよね。先生もこの間、〇〇について書こうとした時、すごく悩んだんだよ」といった声かけは、子どもたちにとって何よりの安心感と、「先生も一緒なんだ」という連帯感を与えてくれるはずです。

「新聞に載った!」子どもたちの瞳が輝き、自信が芽生える瞬間

先生方の温かいサポートと、地域ぐるみの応援を受けて、羽咋市の子どもたちの「書く力」は花開いています。昨年度、羽咋市内の小中学生の投稿は、なんと計239件も「地鳴り」欄に掲載されました。

特に粟ノ保小学校では、全校児童62人という少人数の学校ながら、その半数にあたる31人もの児童の投稿が掲載されたというから驚きです。自分の書いた文章が新聞という多くの人の目に触れる媒体に載ることは、子どもたちにとって、何物にも代えがたい喜びと自信になります。

想像してみてください。 ある朝、食卓で新聞を広げたAちゃんのお母さんが「見て、Aちゃんの作文が載ってるわ!」と声を上げます。家族みんなでその記事を読み、褒められたAちゃんの顔は、きっと誇らしさでいっぱいになるでしょう。学校では、友達から「B君の作文、読んだよ!すごかったね!」と声をかけられ、照れながらも嬉しそうなB君の姿が目に浮かびます。

さらに粟ノ保小学校では、掲載された文章を給食の時間に全校児童に向けて読み上げ、その頑張りをみんなで称え合うそうです。自分が書いた文章が、クラスメイトや上級生、下級生の前で紹介されるのです。どんなにドキドキし、そして誇らしい気持ちになることでしょう。また、羽咋市教育委員会では、掲載された文章を冊子にまとめ、児童や来校者がいつでも読めるようにしています。自分の作品が形として残ることも、大きなモチベーションに繋がります。

同校の5年生担任、川畑里美先生(38歳)は、「自分の思いを文章にするのは確かに難しい作業です。でも、一生懸命考えて書き上げたものが形になった時の達成感は、本当に大きい。その素晴らしい思いを、ぜひ子どもたちと共有していきたい」と熱く語ります。この「達成感の共有」こそが、子どもたちの「もっと書きたい!」「次も頑張ろう!」という意欲を力強く後押しするのです。

今日からできる!家庭で「書く力」を楽しく育む20の具体例

さて、この羽咋市の心温まる取り組みから、私たち保護者が家庭でできることは何でしょうか? 子どもの「書きたい!」気持ちを引き出し、楽しく文章力を育むための具体的なアイデアを、ステップ別に20個ご紹介します。

ステップ1:まず大人が楽しむ、一緒にやってみる!

子どもにとって一番身近なロールモデルは親です。「書きなさい!」と一方的に言うのではなく、親自身が書くことを楽しむ姿を見せることが、何よりも効果的です。

  1. 交換日記(親子、兄弟姉妹で):
    • テーマ例:「今日の感謝3つ」「週末の思い出スケッチ」「お互いへの秘密の質問」「今日の面白かったこと」など。
    • ポイント:毎日でなくてもOK。書く量も自由。スタンプや簡単なイラストを添えるのも楽しいですね。
  2. お手紙ごっこ・はがき作成:
    • 相手:おじいちゃんおばあちゃん、お友達、ペット、未来の自分、好きなキャラクターなど。
    • ポイント:季節の挨拶、近況報告、感謝の気持ちなど、短い言葉でも心を込めて。絵葉書を手作りするのも素敵です。
  3. 今日の出来事3行日記(親子で発表しあう):
    • ルール:「いつ・どこで・何をした・どう思った」を意識して、3行程度でまとめる。
    • ポイント:夕食後など時間を決めて発表会。お互いの1日を知る良い機会にもなります。
  4. しりとり文章(リレー作文):
    • 例:「りんご」→「ごりらさんの好きなもの」→「のはらでみつけたきれいなはな」→「なかよくわけたおやつ」…と、前の人が書いた文章の最後の言葉から始まる文章を繋げていきます。
    • ポイント:奇想天外なストーリーが生まれることも!発想力を刺激します。
  5. 絵を見てお話作り:
    • 素材:絵本、写真、美術館で見た絵、子どもが描いた絵など。
    • ポイント:「この絵の主人公はどんな子かな?」「この後どうなると思う?」など、自由に想像を膨らませて物語を作ります。親子で分担して書くのも良いでしょう。

ステップ2:書くことのハードルを思いっきり下げる工夫

「書くことは難しいもの」という先入観を取り払い、「なんだ、これならできそう!」と思わせる工夫が大切です。

  1. 「おしゃべり」をそのまま文字にする:
    • 子どもが話したことを、親がそのまま書き起こしてあげることからスタート。「見て、こんなにお話できたね!」と見せてあげましょう。慣れてきたら、自分で書くように促します。
  2. 「大好き!」をとことん書く:
    • テーマ:恐竜、電車、昆虫、アイドル、ゲーム、スポーツなど、子どもが夢中になっていることなら何でもOK。
    • ポイント:「好き」という気持ちが、言葉を引き出す原動力になります。図鑑やインターネットで調べながら書くのも知的好奇心を刺激します。
  3. インタビューごっこで引き出す:
    • 親がインタビュアーになり、子どもに質問。「今日の遠足で一番楽しかったことは何ですか?」「その時どう思いましたか?」など。
    • ポイント:子どもが答えた内容をメモし、それを元に一緒に文章を組み立てていきます。
  4. 「書きたくなる」お気に入りの文房具を選ぶ:
    • 好きなキャラクターのノート、カラフルなペン、書き心地の良い鉛筆など。
    • ポイント:形から入るのも時には有効!「このノートに書きたい!」という気持ちが意欲に繋がります。
  5. 短くてOK!俳句・川柳に挑戦:
    • 五七五のリズムで、見たことや感じたことを表現します。季語などの難しいルールは気にせず、まずは楽しむことから。
    • ポイント:短い言葉にぎゅっと気持ちを込める練習になります。家族で作品を見せ合うのも楽しいですね。

ステップ3:日常にキラリと光るテーマの種を見つける「魔法の声かけ」

「何を書けばいいか分からない…」これは子どもたちが最もよく口にする言葉。日常の中に隠れているテーマの種を見つける手助けをしてあげましょう。

  1. 「なぜ?」「どうして?」で思考を深掘り:
    • 声かけ例:「へえ、そう思ったんだね。どうしてそう感じたのかな?」「その時、他にどんなことを考えた?」
    • ポイント:表面的な出来事だけでなく、その背景にある気持ちや考えを引き出すことで、文章に深みが出ます。
  2. 五感をフル活用する質問で描写力アップ:
    • 声かけ例:「その花、どんな匂いがした?」「そのケーキ、どんな味がした?」「波の音はどんな風に聞こえた?」「触ってみてどんな感じだった?」
    • ポイント:具体的な描写は、読み手が情景を思い浮かべる手助けになります。
  3. 「もしもボックス」作文で想像力を刺激:
    • お題例:「もしも空を飛べたら何をする?」「もしも透明人間になったら?」「もしも恐竜と友達になったら?」
    • ポイント:自由な発想で物語を紡ぐ楽しさを味わえます。絵と一緒に表現するのも良いでしょう。
  4. 今日の「一番〇〇だったこと」は?で感情をキャッチ:
    • 〇〇の例:「楽しかったこと」「嬉しかったこと」「びっくりしたこと」「悲しかったこと」「美味しかったこと」「頑張ったこと」
    • ポイント:その日最も心が動いた出来事を振り返ることで、感情豊かな文章に繋がります。
  5. ニュースや本を見て感じたこと・考えたこと:
    • 声かけ例:「今日のニュースで気になったことはあった?どう思った?」「この本を読んで、主人公のどんなところが素敵だと思った?」
    • ポイント:最初は簡単な感想からでOK。社会への関心や、他者の視点を考えるきっかけにもなります。

ステップ4:褒めて伸ばす、自信を育てる黄金の関わり方

書いた文章に対して、どんな言葉をかけるか。それが子どものモチベーションを大きく左右します。

  1. 結果よりもプロセスを褒める:
    • 褒め言葉例:「最後まで諦めずに書けたのがえらいね!」「たくさん考えて言葉を選んだんだね、その時間が素晴らしいよ」「難しいテーマなのに、一生懸命取り組んだね」
    • ポイント:すぐに上手な文章が書けなくても、取り組んだ姿勢そのものを認めましょう。
  2. 具体的な言葉で「ここが素敵!」と褒める:
    • 褒め言葉例:「この『キラキラ光る』っていう表現、景色が目に浮かぶようで素敵だね!」「〇〇ちゃんの優しい気持ちが、この一文からよく伝わってきたよ」「面白い視点だね、ママは思いつかなかったな」
    • ポイント:漠然と「上手だね」ではなく、どこが良いのかを具体的に伝えることで、子どもは自分の強みを認識できます。
  3. 作品を大切に保管・展示する:
    • 工夫例:専用のファイルを作る、壁に飾る、おじいちゃんおばあちゃんに送る、ブログやSNSで(許可を得て)紹介する。
    • ポイント:自分の書いたものが大切に扱われていると感じることで、自己肯定感が高まります。
  4. 間違いを恐れない雰囲気づくり:「直す」より「伝える」を重視:
    • 声かけ例:「間違えても大丈夫だよ、まずは思ったことを書いてみよう」「漢字が分からなかったらひらがなでもいいよ」
    • ポイント:最初は誤字脱字や文法の間違いを細かく指摘するよりも、何とか伝えようとした気持ちを受け止めることが大切です。
  5. 親自身が「書くのって楽しいね!」と心から伝える:
    • ポイント:親が楽しそうに書いている姿、そして「一緒に書けて嬉しいな」という言葉は、子どもにとって最高の応援メッセージです。

おわりに:「書く」経験が、子どもたちの未来を豊かに照らし出す

石川県羽咋市の小学校で見られた、先生と児童が一丸となって「書く」ことに向き合う姿は、私たちに大切なことを教えてくれます。それは、大人がまず一歩踏み出し、共に悩み、共に楽しむ姿勢こそが、子どもたちの知的好奇心と挑戦する心を育むのだということです。

文章を書くという行為は、単に言葉を並べる作業ではありません。自分の内面と深く向き合い、考えを整理し、それを他者に伝わるように表現する、非常に創造的で知的な活動です。この経験を積み重ねることは、子どもたちが自分自身の言葉で考え、自分らしく生きるための揺るぎない土台となるでしょう。

すぐに結果が出なくても、焦る必要はありません。大切なのは、結果ではなくプロセスです。今日ご紹介した20のヒントを参考に、まずは親子で「書くってなんだか楽しいかも!」と感じる瞬間を一つでも多く作ってみてください。その小さな積み重ねが、お子さんの未来を豊かに照らし出す、かけがえのない「書く力」へと繋がっていくはずです。

さあ、今日からお気に入りのノートとペンを手に、親子で「書く」冒険に出かけませんか?

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